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更にみなぎってきた! 

更にみなぎってきた管理人です。改稿しないでUPするのは一種の羞恥プレイだとわかっています。
今回UPするのは、当時常駐していた小説投稿板の企画に投稿させてもらったものでした。企画の
お題は「休日」と「詩」……だったかな。他の人たちの詩が秀逸だったのを覚えてます。てなわけで、
TOS二次創作です! まさかのリーガル×アリシアで、ED後仕様ですよ! ネタばれ考慮なし!

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巡る季節に思いを馳せる――テイルズオブシンフォニアより
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 春風に、歌を歌おう。

「リーガル様。テセアラ国王から通達が届いておりますが」
「わかった、ジョルジュ。そこに積んでおいてくれ。後で目を通す」
「リーガル様! レザレノの経営方針案を纏めておきました! これでよろしければ押印をお願いします!」
「ああ。いつも精が出るな、社長補佐。そこの机に乗せておいてくれ」
「リーガル様? ミズホから伝令の方がいらっしゃっておりますが、いかが致しましょう?」
「すまない、メイド長。今は手が離せないのだ。緊急の用事なら、ジョルジュに伝えてくれるよう頼んでくれ」
「リーガルさん」
「何だプレセア」
「……お茶は、何処に置けば良いですか?」

 手に取っていた書類から顔を上げると、ティーカップとポットを持ったツインテールの少女――プレセアが、私の執務室の扉を開けて少し困ったような表情で立っている。
 顔を上げたついでに辺りを見回すと、部屋が大変なことになっているのに気が付いた。
 机の上には、積まれた相当枚数の書類。目を通し終わった書類の山と、まだ目を通していない書類の山が、一定の境界線を保って乱立している。勿論、その境界線は私にしかわからない。下手に触られれば、すぐに私でもわからなくなってしまうだろう。
 机の脇の床には、ダンボールの箱が少々。この中も書類でいっぱいだが、特に急がない類のものを入れて――半ば投げ入れるようにして置いてある。
 常時半開きの棚には、色とりどりのバインダーが詰まっている。所々穴抜けのようになっているのは、ジョルジュの使っているレザレノカンパニーの社長室にあるか、私の机の書類山に埋もれてしまっているか、どちらかだろう。……いや、床に散在しているものもあるようだ。
 本来応接用のテーブルにも、郵便で届いたものの詰まった箱――その中身は殆どが社交上のお誘いだとか(要するにパーティだ)、貴族たちからの激励の手紙だとか(おおかた資金援助の頼みだろう)、他の企業からのダイレクトメールだとか(最近、こうやって展開する企業が多くて困る)、特に必要だとも思われないものばかり――が置いてあり、ソファにはさっき私が脱いだ上着が放られている。
 お茶の時間を楽しむ余地が無い。
 由々しきことだ。

「……空中庭園で休憩にしよう。プレセア」
「はい?」
「自分のカップも持って来るといい。たまには一緒に休憩するのも悪くないのではないか?」

 私がそう言うと、プレセアは桃色の髪を少し揺らし、ちいさく考えるような仕草をした後、

「そうですね。では、追加のカップを持って来ます。リーガルさんは、先に行っていて下さい」

 そう言って、私にティーカップとポットの載った盆を預けて、給湯室の方へと向かって行った。その背筋の通った後ろ姿に、かつて愛した片翼の面影を見て、私はちいさな溜め息を吐く。一度ゆっくりと目を伏せ、なにかを断ち切るような心持ちで目を開き、彼女の向かった逆方向にあるエレベーターホールに歩を進める。
 折角のお茶が冷めてしまうから、早く行こう。


 ベンチに座って少しすると、プレセアが空中庭園に上がってきた。手に持たれたカップは、ふたつ。私の分は、さっき渡されたティーカップの盆に載っている。何故みっつもカップが要るのだろう。ベンチの近くまで来ると、私の不思議そうな視線に気付いたのか、プレセアはゆるく笑って言った。

「……アリシアの分です」

 そういうことか、と私は得心した。同時に、その優しさに思わず笑みがこぼれた。プレセアは、ベンチにすとんと座ってポットに手を伸ばし、こぽこぽと音を立ててみっつのカップそれぞれにお茶を淹れる。お茶の入ったカップのひとつを私の方に置き、ひとつを自分の前に据え、残りのひとつは、空中庭園に立てられた墓の前――彼女の妹が眠る墓の前に持っていく。
 アリシア。それはプレセアの妹の名であり、私が手に掛けてしまった少女の名だ。多くは語るまい。この罪は償っても償いきれない想いがあるが、彼女は許してくれたのだから。

「……こういう春の日には、思い出すことがあります」

 普段は自分のことなどあまり喋らないプレセアが、墓の前に立ち、唐突に言った。私は黙っていることで、プレセアに話の続きを促す。

「アリシアは、春の似合う子でした」

 私は、彼女がさくら色の髪の毛を揺らして歩く姿を思い出す。確かに、彼女には春という季節がよく似合った。似合う、というよりむしろ、彼女は春のようなひとだった。軽やかで、柔らかで、穏やかで、優しい。ときにわけもなく心が浮き立つ感覚に襲われるのも。何でもない日常がいとしく感じられるのも。未来に希望を持てるのも。春は、人を解放的で前向きにする。

「パパとアリシアと、三人で桜を見に行って、目的地に着くや否や、ちょっと目を離した隙にアリシアは何処かに行ってしまいました」

 迷子になったのだろうか。

「お昼頃だったのですけれど、それからずっとパパと私でアリシアを探していました。三十分位探しても見付からなくて。そうしたら、歌が聴こえてきたんです。アリシアは、一番大きな桜の木の陰でくすくす笑いながら歌っていました」
「歌?」

 私はカップのお茶を啜る。文句無く美味しく淹れられたお茶は、ゆっくりと体中に染み渡っていく。

「歌といっても、即興です。音の並びは適当でしたが、歌詞がびっくりするほどしっかりしていたんです。断片的にしか覚えていないんですけれど、綺麗な歌でした」
「どういう内容を歌っていたのだ?」
「実は、覚えていないんです。でも……」
「でも?」
「作詞家になれるくらい上手だ、と思ったのは確かです。なんだか、アリシアが大人びて見えました」

 プレセアがベンチに戻って、自分の分のお茶に手を伸ばす。

「そのとき、桜の花は満開でした。だから印象強かったのかもしれません」
「その桜の木というのも、さぞかし見事なのだろうな」

 興味本位で、率直に思ったことを口に出す。

「見に行きますか?」
「いや、私にはまだ仕事が」
「見に行くんですか?」
「だから、私は」
「見に行きますね?」
「プレセア、私の話を」
「レアバードはこのウイングパックに入っているのを使ってください。ジョルジュさんには私から言っておきます。桜の木までの大まかな地図はこれです。なんならお弁当も作りましょうか?」
「……厚意はありがたいが、でも」
「リーガルさん」

 プレセアは私を真っ直ぐに見て言う。

「全然休みらしい休みを取っていないのですから、一日くらい休んだってバチは当たりません。たまには息抜きしないと、仕事の能率も落ちます。現に、ここ何ヶ月か、書類の処理速度がかなり遅くなっています。疲れが出てきている証拠です」

 私は返答に詰まった。確かに、プレセアの言う通りなのだ。体調不良は日を追うごとに酷くなるし、この間は執務室で居眠りしているのを、ジョルジュに叩き起こされた。
 プレセアは、ウイングパックからレアバードを取り出した。どうしても行ってこいと言うつもりらしい。

「ついでに温泉にでも行って、ゆっくりしてきて下さい」
「……わかった。ありがとう、プレセア」

 私はレアバードに飛び乗る。ロイドたちとの旅で、身体に馴染んだ仕草。エンジンをふかして、空中庭園から直に離陸すると、あっという間にアルタミラが遠くに見えた。
 地図を頼りに、その木の場所を目指す。


 桜はまだ五分咲きだった。満開には時期が早すぎたが、しかし、その大木は堂々としていて、その佇まいだけでも十分に魅力的な代物だった。
 声が出ないほど。時間の感覚を忘れるほどに、それは美しかった。


 しばらく、そのまま突っ立っていた。
 春風が、心地良かった。



 こんにちは こんにちは
 あなたが ここに きたことを
 わたしは うれしく おもいます
 はると いっしょに きたことは
 ぐうぜんなんかじゃ ないでしょう

 ありがとう ありがとう
 あなたが ここに くることを
 わたしは まって いたのです
 いつ あなたが くるのかと
 ゆきの きせつから まちわびて

 さようなら さようなら
 あなたが いって しまうのは
 それは さみしい ことですが
 わたしは なかずに みおくります
 わたしは わらって みおくります

 そうして きせつは めぐります
 あつい なつ  きれいな あき
 そして ながい ながい ふゆ
 ふゆが おわると はるが きて
 わたしは あなたに であいます



 ふと、彼女の――アリシアの声が聴こえた気がして、私は辺りを見回す。得られた当然の結果に、少々落胆しながらも、しかし、そういうのも悪くは無い、という気になった。
 また来年も、この木に会いに来ようと、そう思った。

 また あいに きてください
 わたしは ずっと まってます

 彼女の声は、そう言っていたような気がしたから。


Fin. (C)KERO Hasunoha 初出:2005/04/24
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あとがき。
とにかく難産でしたが、花見に行きたい衝動を文字にぶつけただけの気もする。
パニック! - ゲーム攻略・裏技 -さま(当時は「ゲーム攻略・裏技」というサイト名でした)にて投稿。

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[ 2009/04/28 23:48 ] 小説系 | TB(0) | CM(0)

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