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ロミシンそのさん! 

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ロミオとシンデレラ――From a music, "Romeo and Cinderella" by doriko
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3.ずっと恋しくてシンデレラ

 そうして何事もなかったみたいに、いつもの朝がくるのよ。目覚ましはきっかり6時に鳴って、私が体を起こす頃に、妹は布団に潜り込む。顔を洗いに行くついでに、キッチンに立ってお弁当を作っているママと、いつもの挨拶を交わす。顔を洗ってからリビングにも顔を出して、パパに挨拶するのもいつも通り。いつもならば、私が一旦部屋に帰って身支度をしている間に、妹がもそもそと起きだして、顔を洗いにゆくのだ。
 ――でも、昨日は割と夜更かししてしまったから、起きるのはもうすこしあとになるかしら。
 夜毎開催される妹との「水入らずな話をする会」は、私たち姉妹の関係に、表面からは窺うことができないような、けれど確実な変化をもたらしていた。お互いにお互いを興味の対象としてみているし、お互いの情報を共有してときには助け合っているのに、それでいてお互いボロは出さないようにかすかに緊張している。敵の情報を盗み出すハッカーのように腹の探り合いをしながら、必要なときは相手を利用し合う互助関係をむすぶ私たちは、姉妹というよりも「共通の秘密をもった女友達」に近いのだろう。
 私が身支度を整えて、部屋を出ようとしたとき、妹の枕元で携帯電話が鳴る。目覚ましほどの音量ではないそれが鳴った途端、それまでもぞもぞと布団にくるまっていた妹が起きだした。

「……おはよう」
「んぁ、おはよ、みくねえ」

 今だ眠りも覚めやらぬ、といった状況でも、いちおう返事を返してくるあたりは、妹も律儀だとおもう。妹は、携帯電話のフリップを開いて、なにごとか操作した後、すこしだけ笑ってメールを打ちはじめた。

「彼が起こしてくれるのなら、目覚まし時計を鳴らす意味もあまりないのではないの?」
「残念でしたー。レンもわりとお寝坊さんだからあてにできませーん」
「よくよく似た者同士なのね」
「なに、ミク姉妬いてんの。お願いしてみれば? モーニングコール」
「私はそこまでしてもらうほど子どもじゃないの、あなたと違って」
「うわっ、でたよ腹黒」

 早く支度しないと朝ごはんを食べ損ねるよ、とだけいいのこして、私は朝食が用意されているであろうダイニングに向かった。いつものように、パパは自分用のココアを作り、ママはおかずを準備している。今日のおかずは、卵焼きにからあげ(ということは、お弁当にも卵焼きとからあげが入っているはずだ)、野菜はじゃこと水菜のサラダに、ほうれん草のおひたし。冷蔵庫から野菜ジュースを取り出すついでに鍋の中を覗くと、葱の浮かんだ味噌汁が見えた。ママが、パン皿とお茶碗の棚を前にして、私に声をかけた。

「ミク、今日はごはん? パン?」
「私、ごはんにしようかな」
「えー、じゃあ今日のパン派はおれだけー? パパさみしいー」
「もしかしたら今日はリンちゃんがパンかもしれないじゃない」
「……リンはいつもごはんじゃないか」
「なに、呼んだ?」
「リン、今日はいつもより寝坊ね。早く顔を洗ってきなさい」

 ママの忠告にも生返事で、妹がばたばたと洗面台に駆け込んでいく。
 ウチの朝ごはんはママと妹がごはん派、パパがパン派、私はその日のおかずや気分によってまちまちだ。既に席についてハニートーストを齧っていたパパが、ひどく残念そうな顔をしたけれど、仕方ない。私にとっておねぎは正義、お味噌汁にはごはんなのだ。いただきます、と、宣言して、私はお味噌汁に箸を伸ばす。うん、今日もママの味付けは絶妙ね。
 やっと身支度を整えた妹が、テーブルに着いた。横目にふと見た妹の髪形に違和感を覚えて、私は、すこしの間、皿の上から視線を外す。トレードマークのリボンはいつもの位置、毛先のはねた具合も変わらない。ああ、そうか、前髪に――。

「リンちゃん、いつもの白いヘアピン、どうしたの?」
「あ? ああ……なくした。どこかに落としたのかな。昨日体育あったし」
「前髪が垂れているとうっとおしいわね。リン、私のヘアピン、花のやつだけど貸してあげる」
「あ、いいの。ママ。落し物のところにあるとおもうし、学校で探す」
「そう?」

 他愛もない会話、進む時計、消化されてゆく朝食。

「あ、ママ、今日は私ちょっと帰りが遅くなるかも。合唱部の子と約束があるの」
「あら? また合唱部に助っ人?」
「そんなところよ」

 私は歌がへたではない。たぶん、じょうずなほうなのだとおもう。そのせいか、よく合唱部の発表会やコンクールに助太刀を頼まれる。ウチの学校の合唱部は、指導する先生の実力もあり、また練習熱心なメンバーが揃っているのだが、とても人がすくない。きっと本気で歌を歌いたいという志の高い先輩たちの、若干スパルタな指導についていけない下級生が多いからだろう。練習時間が長いのも一因しているかもしれない。なにしろ、警備員さんに怒られるような時間まで練習していたりするのだ。
 だから、「合唱部の子との予定」は、夜遅くまで帰らなくてもよい、格好の口実。

「そう。それじゃあ、夜は気を付けて帰ってくるのよ」
「なんならおれかめーちゃんが迎えに行くからね」

 女の子のひとりあるきは危ないからね、あまり遅くなるようなら遠慮なく呼んでよ、と、はちみつよりも甘い笑顔でパパがいう。その笑顔に、歯の奥にじゃこがはさまったようなむずがゆさを感じた。
 ごめんなさい、私の大好きな優しいママ。ごめんなさい、私の素敵な優しいパパ。
 でも、

「ちゃんと気をつけて帰ってくるから大丈夫よ、パパ、ママ」

 いまは彼のことが恋しくて、仕方がないのよ。

02<< To Be Continued... >>04 (C)KERO Hasunoha
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[ 2009/05/13 02:47 ] 小説系 | TB(0) | CM(0)

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