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ロミシンそのろく! 

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ロミオとシンデレラ――From a music, "Romeo and Cinderella" by doriko
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6.そうじゃないと楽しくないわ

 それは30分ほど前のこと。なにやら姉が叫んでいる声と、パパやママが何かいっている声が聞こえて、ほどなく、あたしは窓の外に走り去る見慣れた制服のツインテール少女を見送った。なにかあったかな、とおもいながら、やっぱり気になってリビングに行くと、パパが妙にしょんぼりしていて、部屋に入ってきたあたしに気づいたママは苦笑してあたしを見た。なにもない風で、ミク姉帰ってきた? って、軽い感じで話を振ると、ママは、ミクにやっと反抗期がきたみたいね、って笑った。それから、パパのほうに向き直り、

「パパ、お風呂入っちゃえば?」
「うん……でも、探しに行かなくて大丈夫かな」
「だいじょーぶよ、気が済んだら帰ってくるでしょ」
「そうかなあ……」
「まあ、探しに行くとしても、アンタが行ったらまた逃げられるとおもうけど」
「う……」
「私がなんとかしとくから。とりあえず、ひとりでゆっくり反省しなさい」
「……はい」

 そうして、パパはすごすごとバスルームに入って行った……とおもったら、すぐにバスルームから出てきて、バスタオルを持って、またバスルームへ入って行った。よほど動揺しているとみた。ママと顔を見合わせると、ママはまだ苦笑したままだった。
 パパをお風呂に追いやってから、あたしはママとふたり、ダイニングテーブルに向かい合っていた。聞けば、姉は帰ってくるなりパパとケンカして、家を飛び出して行ったらしい。あの両親に対しては徹底的に優等生だった姉が飛び出して行くなんて、よほどのことだ。きっと姉の「秘密の彼」絡みのことだろうとおもって聞いていたから、ママのひとこともうっかり聞き逃すところだった。

「別にいいじゃないねえ、嘘のひとつやふたつついて、男の子と遊んでいたって」
「えっ、ミク姉に彼氏いるの知ってたの?」
「あら、やっぱりそーなの?」

 げ。もしや誘導尋問だったか。

「まあ、パパはどーか知らないけど、私は薄々ねー。伊達にあんたたちの母親何年もやってないわよ」

 ダイニングテーブルの向かいに座って、優雅にお茶を飲んでいる(今日は休肝日らしい)ママは、満面の笑みでニカッと笑った。……この母親、なかなか侮れない。パパもずいぶんな食わせ者だとはおもっていたけれど、実はママのほうがよっぽど曲者なのではないだろうか。

「で、ミク姉どこ行ったの?」
「うーん、家出といったら順当に考えて、逃げ込む先は友達の家よね。もしくは彼がいるなら彼のおうちとか」
「……さらっというねえ……家出とか……」
「まあそのうち何か連絡がくるわよ。リン、ミクから連絡きたら教えてね」
「連絡こないかも知んないじゃん。それになんであたしなの」

 この、いっそ清々しいまでの能天気っぷりには、さすがのあたしも少々頭痛がしてきた。ママという人は、楽天家だ。男勝りというか、漢らしいというか、とにかくこざっぱりしてきっぷのいい姉御肌なのに、たまにこういう抜けた発言をする。

「ミクは律儀だから。絶対連絡くるわよ。パパになんてくるわけないし、私にもきっと連絡しづらい。だから、何かあったらリンに連絡するはずなの」

 言いきったママの顔には、不敵な笑み。ママは、確信しているのだ。これから姉がとるだろう行動も、きっとぜんぶわかっている。ママは決して楽観視しているわけじゃないし、けれどパパみたいにうろたえてもいない。そんな揺るぎなさを、肌で感じた。
 さっきの言を訂正する。ママは、状況把握能力も問題処理能力もハンパなく、鋭い観察眼と豊富な経験をもった、ここぞというときに冷静な頼もしい女の人だ。

「そろそろ連絡がくる頃かしらね」

 携帯が鳴る。いつもの着信音。あたしの彼からじゃない。けれど、あたしは、ほとんど反射に近い速度でメール画面をひらいた。その画面に表示された送信者の名前を見て、あたしは小さく驚嘆の声をあげた。ママの見立て通りだ。彼女はあたしに連絡を寄越した。

「ママってもしかして、エスパー?」
「まさか。もう出て行って時間もたつし、ちょうど頃合いかとおもっただけよ。で、なんだって?」

 あたしは、メールの文面を見た。おもわずにやりと口角が上がった。

「ところでママ、ミク姉の『彼氏』の見当とか、ついてる?」

 ママは、姉の安否を気にしている風で、「それよりも、」といいかけたが、あたしが話をはじめたら終わるまで気が済まない性格なのも知っていて、肩をすくめながらも話に乗ってきた。

「そこまではわかんないわね、さすがの私でも」
「安心していいよ、そんな変な人じゃないから」
「あら、もともと心配してないわよ。でもまあ、ミクが逃げ込めるだけの包容力があるってことは確かみたいね。同い年ではないわね。年上よね、きっと」
「……ママって、やっぱエスパーでしょ? すっごい鋭いんですけど」
「あら、本当に年上?」

 げっ、カマかけられた! と、思った時にはもう既に遅かった。こっちは本当に誘導尋問だった。うっかり引っかかってしまったのが情けない。

「で、ミクは何だって?」
「今日は彼のおうちにお世話になるって」

 ママの前では、隠しごとなど無意味なような気になって、正直に伝えた。というか、ママ相手に下手にうそをついても、何の利益もない(パパには刺激が強すぎるだろうから、うそをつく価値はあるかもしれないが)。それを聞いて、ママは、予想どおりね、というような苦笑を洩らした。

「じゃあ、無理に連れ帰ることもできないでしょうし、先方にお電話しなきゃね。ウチの娘がご迷惑を――って」
「べ、別にいいんじゃない? そんな仰々しくしなくても」
「よくないわよ。一日預かってもらうんだから」
「ホラ、おふたりのジャマをしちゃ無粋ってヤツ、じゃない?」
「リン、それとこれとは話が別。相手に迷惑かけっぱなしじゃ、義理人情に反するってもんよ」

 むぅ、義理人情ときたか。さすがママ。あたしの信条をよくわかってものをいう。

「でも、ほんと、必要ないとおもう」
「リン、あのね――」
「だって、ミク姉いま神威さんとこだし。神威さんなら安心でしょ」

「……え、なんで? ミク、がっくんのとこにいるの?」

 あたしは、このときほど鳥肌が立った時はない。ママとの話に夢中になって気付かなかった。今日のあたしは失態続きだ。
 あたしの背後には、お風呂上りのパパが立っていた。小首をかしげてぽかんとして、頭上にハテナがたくさん見える。
 心の中で、最愛の姉に謝罪した。ミク姉、ごめん。あんたの恋、現在進行形で、大ピンチかもしれない。

 ――でも、傍観者のあたしにとっては、こんなに、鳥肌が立つほど楽しい状況もない!

05<< To Be Continued... >>07 (C)KERO Hasunoha
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[ 2009/05/13 02:57 ] 小説系 | TB(0) | CM(0)

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