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ロミシンそのはち! 

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ロミオとシンデレラ――From a music, "Romeo and Cinderella" by doriko
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8.落としたなんて嘘をついた

 あの初めての家出から、いくばくかの日が経った。私はパパと頻繁に衝突するようになり、彼の家への「家出」も、頻度こそ少ないものの、確実に回数を重ねていった(初めての家出のとき、彼のいった「今回だけ」は、遂に実現されなかったことになる)。もちろん、彼にもパパにもママにも妹にも、申し訳ないという気持ちはある。とくにママには、いくら感謝しても足りないくらいの迷惑をかけているのだ。妹の話だと、私が「家出」している間に、落ち込んだり自棄になりかけたりするパパを抑えて慰めてあげているのはママなのだという。その話を聞いてすぐに、負担をかけてごめんなさい、と、ママに直接謝ったときには、ママは「家出先のわかっている家出ほど、安心なものはないもの、このくらいは負担でもないわ」と笑った。おおらかな母だとおもう。今では私の「家出」の際に、「神威くんのところに行くのなら、この茄子漬とシフォンケーキの余りもおすそわけに持って行ってくれない?」とおつかいを頼むほどだ。
 パパを抑えてくれているということは、ママは応援してくれているのだろうか。その割には、私が帰ってくれば心配したでしょと叱り、彼に会えばうちのミクが迷惑かけてと謝る。親の体面を気にしているのだろうか。でも、そんなことに価値を置く人じゃないのは、家族の誰もが知っている。
 珍しく、「家出」しなかった(というか彼が仕事なので、「家出」ができなかった)週末の夕飯時、斜め向かいに座るママの顔を見ておもった。パパはお仕事で遅くに帰ってくるという。彼と一緒に仕事をしているのだろうかとおもうと、なんだか胸がざわざわする。

「さっきからなあに、ミク?」
「ううん、なんでもないわ。ママって肌きれいだなあとおもって」
「あら、ミクとリンにはかなわないわよ」
「ミク姉、『その歳にしては』って言葉が抜けてるよ」
「リン、ずいぶんないいようじゃないの……せっかくオレンジ買ってきたけど、今日はおあずけにしようか」
「えっうそ! たべるたべる!」

 他愛もない会話と共に、女3人の食卓は終わり、妹は部屋に戻り、私とママは後片付けにはいる(まったく、妹もすこしは手伝えばいいものを)。今日のメニューは大皿でのカニ玉だったので、洗いものもすくなく、比較的らくに終わりそうだ。ママが洗って私が拭く、という流れ作業の果てに、食器の数が半分ほどに減った頃、玄関チャイムが鳴った。こんな時間にお客さんだろうか。手が泡だらけのママの代わりに、私が玄関まで出て行く。
 玄関を開けると、そこにいたのは、妹と同じ学校の制服を着た男の子。知らない子だ。ここらへんの子ではないだろう。

「ええっと、どなたでしょうか……」
「お、遅くにすみません。あの、リ」「――ミク姉ストーップ! それあたしの客!」

 背後からけたたましい足音と妹の声が追いかけてきて、瞬く間に客を扉の外に出してしまった。

「リンちゃん、お客さんに失礼――」
「内緒にしといてよね! あいつ、あたしのノート借りに来ただけなんだから!」

 それならば内緒にする理由もなにもないではないか。が、その言い方から、彼が何者なのか透けて見えた。なるほど、彼は妹に会いに来るついでにノートを借りに来たのかもしれない。
 妹も外に出て行ったので、私は台所に戻る。

「誰?」
「リンちゃんのお友達。ノート取りに来たんだって」
「あらそう。あ、食器、全部片付いたから。ありがとうね」

 折角台所に来たが、お役御免らしい。私は自室に引き上げることにした。部屋に入ると、カーテンの向こうから話し声が聞こえる……きっと、件の2人だろう。と、いっても、妹たちの声がとくべつ大きいわけではない。この部屋が玄関に近いので、聞こえてきてしまうのだ。どうしても。――決して、盗み聞きなんかでは、ないけれど。聞こえるものは仕方がない。

「――リン、ほんっと、もう、勘弁してくれ。マジでオレ、心臓が縮むかと思った」
「なっさけないわねー、そのていどで。たかがあたしのヘアピンでしょお?」
「だから、そのたかがヘアピンから全部バレんだって! ウチの姉貴、なんか知らねえけどすげえ鋭くて!」
「気の利いた言い訳できないレンがわるい。てゆーか、ヘアピンに気付かないレンがわるい」
「うっ……! ……と、とにかく、ヘアピン返すから! もう、こういう忘れ物してくなよ!」
「うん、忘れ物はしない。次からはちゃんと意図的にわかりやすく置いて行く」
「――リン!」
「だって、レンは優しいから、またこうして会いにきてくれるでしょ?」
「……そんなことしなくても、お前が呼んだら会いに来るっての……」

 だめ! もう、聞いていられない! こっちが恥ずかしくなってしまう。私より年下のくせに、なんてませたことをいう子たちだろう。私は、机の隣のラックに置いてあるヘッドフォンを取り、プレイヤーから音楽を流す。プレイヤーには合唱部のコンサートでうたう曲の参考音源が入っていた。ちょうどいい、楽譜も見ながらイメージトレーニングしようか、と思って楽譜も用意するけれど、いまいち頭に入ってこない。
 ――またこうして会いにきてくれるでしょ。
 ――そんなことしなくても、お前が呼んだら会いに行く。
 14歳でも、こんな艶っぽい会話ができるものなのか。もしこれが私ならば、14歳の時に(といっても2年前だが)、こんなに大胆なことはいえなかっただろうし、こんな風に受け答えしてくれる男の子も周りにはいなかった。やっぱり、最近の子どもは、ませている。私が彼とするような会話を、平気でしている。私だって、やっと最近、こんな風に甘える術を会得したばかりだというのに。
 CDのトラックが次に移ったのにも気づかず、思考に埋没していた私は、部屋のドアが開く音で顔を上げた。

「? ミク姉、顔、赤い?」
「なっ、なんでもないっ!」
「なに、もしかしてあたしとレンの話聞いてたの? 盗み聞きなんてやらしいなあ」
「……それをいうなら、この部屋の立地条件を呪うことね」

 聞いていたのは事実なので、認める。部屋に入ってきた妹の手には、白いヘアピンが握られている。

「ヘアピン、彼の家に忘れていたのね」
「ん? 忘れたってゆーか、置いてったんだけどね。チューするとき額に邪魔っていうから外したのに」

 なんだか、いろいろ聞いてはいけないことを聞いてしまった気がする。

「そしたらね、レンちのお姉ちゃんに見つかったらしくて。ひどくない? そりゃ、ヘアピン外したのはレン見てなかったけど、すぐ見えるとこに置いたのに。ずうっと気付かないって、どういう神経よね。机の上が汚いからいけないのよ。掃除してあげよっかっていっても別にいいとかいうし。そんなんだからお姉ちゃんに部屋掃除されちゃうんだよ。バカよねー」

 一気にまくし立ててから、でも、と妹は続けた。

「まあ、ウチまで持って来るなんて予想外だったから、そこは評価点かな」

 私たちには学校に落としたなんて嘘までついて、裏では彼をおびき寄せていたくせに、よくいうわ――とは、いえなかった。

07<< To Be Continued... >>09 (C)KERO Hasunoha
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[ 2009/05/13 03:00 ] 小説系 | TB(0) | CM(0)

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