スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-)

中編だよ! 

ピアプロで完結したのでこっちにもUPですー。
ぽルカ(がくルカ)のカップリング要素あり! 苦手なひと、ご注意ください。

******
留守番と和菓子の昼下がり――Is it tasty?
******

2.昼下がり

 我ながらものもちがいいと思う。と、いうのも、ルカ殿が着ているエプロンのことだ。色褪せたような薄赤の地に野菜と花柄の刺繍の入ったそれは、メイコ殿からのお下がりを染め直して、刺繍を施したものだ。染めは失敗した(本当なら、もっときれいな薄桃色が出るはずだったのに、どこかくすんだ色になったのは、染料と布地の相性が悪かったかららしい)けれど、せめてもと刺繍を施したのだ。ちなみに、この刺繍というのも、一部はミク殿が作成したものである。黄色の糸で、やや不格好にしている花柄がミク殿の作だが、これを縫いきった時点で、彼女は布を手放した。手刺繍というのは意外に神経をつかう。慣れない作業で疲れたのだろう。
 さて、このひとはいつ音をあげるだろうか。いや、音をあげるなんてことはしないのかもしれない。

「……まだですの?」
「うむ、まだだな」

 さて、現在あんこを煮詰めているところである。思いつきで発案しただけに、とうぜんあんこのストックも底をついており、ここからはじめるとなると手間だったのだが、まあ仕方がないだろう。ここまでの工程では手早く、かつ繊細に小豆をあつかわねばならないため、ルカ殿の(女性の割には)力技な所作にブレーキをかけつつ、なんとか豆の本煮までこぎつけた次第である。
 しかし、ルカ殿がいることで、ひとりで作っているときと違い、本煮の時間というのは存外に暇であるということがわかった。いわゆる「待ち」の工程であるが、暇つぶしのつもりが、逆に暇を持て余す事態となった(いつもなら、この時間で洗濯物を畳んだり、軽く居間の掃除をしたりするのだが)。

「……まだ、ですわよね」
「うむ。まだまだ」

 また、ルカ殿がそわそわと落ち着かなくなる。いちおう緑茶を用意しているが、既に茶葉を替えて2杯目だ。向かいに座るルカ殿は、きょろきょろと所在なげに視線をさまよわせている。不躾にならない程度にその視線を辿ってみる。まず、豆を煮ている鍋から出発し、そして部屋の戸口に向かい、次に窓の外に広がる空、ときに食器棚などを通り過ぎながら、また鍋に戻り視線がループしていく。豆が気になる気持ちは、私もわからなくもない。料理中の待ち時間には、うまくできればいいという不安と期待がつのる。では、部屋の戸口と窓の外を気にするのは、なぜだろうか。
 ――ああ、そうか。

「ずいぶん落ち着かないようだが」
「へっ? あ、ああ、べ、別になんともないですわ」
「ミク殿と双子が恋しいのだな」
「ちっ、違いますわ!」
「それでは、カイト殿とメイコ殿が恋しいのか」
「なっ……! わたくし、そこまで子どもじゃありませんのよっ!」

 ばかにしないでくださいませ! と顔に気色が戻ったルカ殿を見て得心した。
 長らくひとりぐらしなので、そういう感覚も薄れていたのだが、よく考えれば、あたりまえのことなのかもしれない。彼女は、少人数の「生活空間」に慣れていないのではなかろうか。

「強がらずともよいのに」
「強がってなどいませんわ!」
「いやいや、いままで大人数でくらしていて、今日急に二人減ったし、今は子どもたちもいない。さみしくなっても不思議ではないのだよ?」
「そんな、さみしいというほどのものでも」

 そう言いながらも、視線は戸口に注がれている。早く帰ってきてほしいのだな、というのが、それほど付き合いが深くなくともわかるしぐさ。

「カイト殿たちは、楽しんでおるかのう」
「もう向こうには着いている頃だろうし、観光でもしているのではないかしらね」

 窓の外に向ける瞳は、遠くにいるひとたちを思っているのか、すこしだけせつなさを孕んで細められている。なんだかんだといっていても、気になるのだろう。

「ところで、カイト殿はともかく、あのメイコ殿がよく旅行など行くといったものだなあ」
「初音と鏡音の押しに断れなかったのですわ。ねえさまはお優しいですから。まあ、あの青いのは『骨休めだと思って』なんて都合のいいことをいって、乗せようとしていましたけれど」
「喜んだだろう、カイト殿は」
「ええ、何かの差し入れでアイスの詰め合わせをもらったときとおなじ顔をしていましたわ」

 喜んでいる様をありありと想像できるところが、なんとも切ない。いちおう彼も成人型ボーカロイドなのだが、下手をすればレン殿よりも幼い行動をとることがある。そのたびに周囲から呆れられたり、メイコ殿に叱られたりしているのだが、それがだいたい愛嬌で片づけられてしまうのも、カイト殿ほんらいの人柄が成せる業だろう。

「ねえさまも、最初は困った顔をしていましたけれど」
「うむ。財布のひもも固そうだからなあ、メイコ殿は」

 対してメイコ殿は、人間なら良妻賢母といったところ、大人数の一家をじょうずにまとめあげている。メイコ殿が誠実でひとの気持ちを汲むことに長けていることを知るからこそ、しばしば隣家から年少の子たち(ときにカイト殿)を叱る声が聞こえてきたりしても、聞いている方としては微笑ましく思う次第である。

「でも、せっかくだからと勧めたのですよ、わたくしも。そしたらやっと折れてくださって」
「ルカ殿は、二人旅には反対だったのではないのか?」
「そりゃあ、ねえさまと青いのが二人きりはゆるしがたいといいましたけれど、反対というほどでもありませんわ。最近まとまった休みがないようでしたし、いつもなにかとお世話していただいているのでお礼もしたかったし……それに」
「それに?」
「……たまには青いのにねえさまを貸してやらないと、不憫で見ていられないのですもの」

 思わず目を見開いてしまった。傍目からは、少々やりすぎな感も否めないほど、ルカ殿のカイト殿に対する態度は冷たい。もちろんルカ殿の言葉や態度はからかい混じりの戯れだとわかってはいても、同じ男として、カイト殿に同情したことは数知れない。が、なるほど、ルカ殿もカイト殿を闇雲に毛嫌いしているわけではないようだ。

「ルカ殿は兄思いなのだな」
「違います! ええ、断じて!」

 たん、と机に拳が落ちて、湯呑の中身が波を立てた。

「……ただ、いつもいつもねえさまにまとわりつこうとして失敗して、まあわたくしがゆるさないのですけれども、とにかくそうして勝手にいじけてうじうじされるといやに目についてうざいのですわ! そのたびに初音や鏡音たちに心配されたり慰められていたりして、まったくすこしは他人の迷惑も考えていじければいいものですのに、あの青いのは!」

 握った拳はそのままに殆ど一行一息の勢いで一気にまくしたて、ルカ殿は大きく息を吐いた。
 ふむ、ようするにカイト殿が意気消沈していると気になるし、ミク殿たちにとりなし役をさせているのも申し訳ないし、といったところか。

「でもその青いのと一緒に旅行、といった時に、ねえさまも嬉しそうな顔をしていましたもの。……ねえさまが望むのならば二、三日の我慢など造作もありませんわ。ねえさまも青いののことを憎からずおもっているみたいですし……でもこれはねえさまの唯一の欠点ですわ、ねえさまは見る目がなさすぎます!」

 怒涛の勢いで話を終え、若干息を荒くしているルカ殿は、湯呑の中の茶を一気に飲み干した。
 とどのつまり、メイコ殿のことを思うと、カイト殿も無下にできない、ということか。……本人はきっと認めないだろうけれど。

「なかよしなのだなあ」

 思わず言葉がぽつりと漏れた、ことに、自分自身で驚いた。
 なんだ今のは。ただの感想ではないなにかの混じった呟きだった。なにが混じった。羨望か? 嫉妬か? たくさんの家族がいて、その家族を思いやることができる彼女に? それとも彼女に思いやられている家族たちに?
 ひとり混乱する私を、ルカ殿が不思議そうな瞳で見ている。ああ、願わくは、この混乱が相手に伝わっていないことを――

「なにをいっていますの。カムイも『なかよし』でしょう?」

 ……なに?
 はたと思考の止まった私を見て、ルカ殿がふっと柔らかく微笑んだ。

「わたくしが来る前からここにいるカムイが、わたくしより皆となかよしでないなんて、ありえませんわ」

 その顔はとても穏やかで、思わず魅入られてしまいそうで、直視できずに視線を逸らした。いや、人の話をきくときに、その人の方を向かないのは失礼だとわかってはいるが、でも。
 完全に思考の止まった頭と、目を離していてすらさっきの微笑みが焼き付いて離れない視界と、なんだか急に上がった体感温度が、先ほどとはまた種類の違った混乱を招いていた。

「……ま、豆は煮えたかな」
「? まだまだだ、といっていたのはカムイではありませんの」

 おかしなひとね。そういってまた微笑む彼女が、昼の陽射しに輝いて見えたのは、錯覚か。

1<< To Be Continued... >>3 (C)KERO Hasunoha
******

ルカさん家族への思いを語る、の巻。なんだかんだ言って家族思いなルカさん。
がっくんどきどきする、の巻。がっくんは鈍いくらいがちょうどいいとおもってます。
がっくんは天然っぽいので、好きなひとができても無自覚期間が長そうです。
書き手としては話がすすまなくてこまります(それは書き手の手腕の問題(サーセン

あんこを作る時、小豆を一晩水に漬けておくのがデフォルトだと思ってたのですが、水に漬けない
作り方もあるんですね! むしろこしあんは水に漬けない方がいいとか。勉強になります……。

やっぱり甘くならなくてやきもきしているのは、作者も一緒です!(誰にともなく

******

ブログランキング参加中。
ブログランキングバナー
[ 2009/06/13 02:10 ] 小説系 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://phantomlake.blog58.fc2.com/tb.php/1226-633af1f4


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。