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たなばたネタ続き! 

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The Seventh Night of August ―― The star festival in old calendar.
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2.七月十四日

 7月14日。めーこさんとかいとくんが、顔を合わせず声も交わさず1週間。
 学期末のレポート作成をしているさなか、鏡音の双子が、勝手にエディターを開いて声を荒げた。
「マスター! メイコ姉をなんとかして!」
 ……めーこさんもかいとくんも、勝手にエディターを開いたりしてくるが、りんちゃんとれんくんもできたとは驚きだ。いや、でも、めーこさんがいうには、勝手にエディターを開くのは「万が一の緊急避難対策の一環」でもあるらしいので、ほかの4人も教えてもらっているのかも知れない(とはいえ、レポートの作成中に、こういう作業中断はとても萎える)。というか、提出期限の迫ったレポートを抱えている身としては、その……現実逃避の口実を与えないでほしいところなのだけれど。
「あー、はいはい。後で後で。いまレポート書いてるから」
 本当はりんちゃんやれんくん、それに件のめーこさんも構ってあげたいところなのだが、いかんせんこの授業の単位は落とせない。じぶんの正直なきもちには背を向けて、がんばってそう言うまでは良かったが、はいそうですかとエディターを閉じて帰っていってくれるような機能は、ウチのりんちゃんとれんくんには備わっていない(これが普通のアプリケーションソフトなら、不良品と言われてもしかたないのだけれどなあ)。
「マスター! せめてさ、今日はワンカップ1本だけでも、メイコ姉にあげてちょうだいよ!」
「だめならビール1杯だけでもいいからさ、とにかくなんか、酒よこしてくれよ!」
「あのねえ、めーこさんが禁酒するっていってんのは、マスター命令だけど同意の上でのことなの。それに私が酒あげたところで、あの頑固なめーこさんが手をつけるとは思えないね」
「それはそーだけど、でもさあ!」
「メイコ姉がさすがにおかしいんだよ!」
「……おかしい? どういうことだい?」
 日頃のおこないのせいか、バグとかウイルスとかいうことばが頭をよぎる。りんちゃんとれんくんは切羽詰まったような顔で、交互にまくし立てた。
「なんか、ぼーっとすること増えたし!」
「呼んでも返事しないとか、聞こえてないんじゃないよなって心配になるよ!」
「それに、たまにちょっとふらふらしてる!」
「もしかしてメイコ姉、酒飲んでないから勇気とか愛とかなんかその辺のもんが足りてないんじゃねえの!」
「あと、今日なんか、カイト兄いないのにカイト兄にお使い頼もうとして顔赤くなってたし!」
「なあ、これまたなんかのバグ? って思って、思わずノートン先生に相談しに行っちまったよ!」
「とにかくマスター、メイコ姉がおかしいの!」
 ……なるほど。
「りんちゃん、れんくん……猫かぶりはやめようか。キミら、わかっててやってるだろ。めーこさんのこと、そんなに心配してないくせに、私のレポート作成じゃましないでくれるかな」
 りんちゃんとれんくんの顔が、きょとん、というような擬音が聞こえてきそうなほど急速に変わり、それから、にたあ、というような擬音が聞こえてきそうなほど凶悪な笑みを湛えた。
「ちぇー。ミク姉は騙されてくれたのになーあ。『リンちゃん、わたしもお姉ちゃんがすごく心配!』ってさあ」
「14歳設定のアプリケーションソフト風情が、私をだませるとでも思っていたのかい、りんちゃん」
「だからオレも言ったんだよ、マスター相手にそれは不毛だって」
「れんくんは聡明だねえ。そして分をわきまえている。それにくらべてりんちゃん、キミはちょいとおいたが過ぎるんじゃないのかい?」
「まあまあ、ちょっとしたお茶目ですよう、マスター!」
 だって、誰を出しぬけてもマスターは欺けないなあって思ってるし! と、満面の笑みで言い放つりんちゃんは、実はウチのボーカロイドのなかで一番腹黒いんじゃなかろうか。しかし、れんくんも一緒だから、うっかり騙されかけた(なんて、口が裂けてもいえない)。れんくんの演技力は半端じゃない。今回も、『勇気とか愛とかなんかその辺のもん』なんて言わなければもしかして騙されていたところだ。
「でも、メイコ姉がぼんやりしてたり、呼んでも返事しなかったり、ふらふらしてたりするのは本当」
「ついでに、『カイトー、買い物ー……』って言いかけてたのも本当」
 ふたつのにやにや笑いがこちらを見ている。双子はこうして、私の反応もはかっているのだ。目には、好奇の光が宿っている。どう対処すべきか、とも思ったが、思案しながらも、こちらの顔までにやけてくる。
「そうかい、めーこさんはいま、そんな風になってるのかい」
「ねえねえマスター?」
「一体何企んでんだ?」
 じつをいうと、私は、このりんちゃんとれんくんの好奇心に充ち溢れた瞳に弱い。可愛いものと美味しいものは正義だ。
「めーこさんに言わないんだったら、教えてやってもいいけどなあ」
「言わないよ!」
「言わないから!」
 ほんとうかなあ、なんて思いながら、私は、りんちゃんとれんくんに、内緒話でもするように、声をひそめて話をした。


3.七月二十一日

 7月21日。めーこさんとかいとくんが、顔を合わせず声も交わさず2週間。
 調声練習の休憩中に、初音さんが、おずおずと話を振ってきた。
「……あの、お姉ちゃんとお兄ちゃん、いつになったら会わせてあげられるんですか」
 上目遣いの初音さんには、なぜか妙な覇気があったけれど、ここはスルーだ。
「ん、音源の耳コピできたらね」
「耳コピ必要な曲なんですか。カバーですか?」
「まあそんなとこ。やあ、でもやっぱり耳コピむずかしいねえ」
 耳コピというのは、相対音感のためされるところだ。膜鳴楽器に張られた皮の音の高低はわかるというのに、普通の音程が上手にとれないというのは、きっと私くらいのものなのだろうな、と思ったものだ。自分が異端な方向をいく奏者だというのは、ずいぶんまえから分かっているけれど、DTMというのはそんな生音ばっかりの経験ではどうにもならない部分というものがある。これまでずいぶん勉強もした気がするが、まだまだ先人たちには到底及ばない。だからこそやりがいもあるのだが――でも、耳コピは勉強でどうにかなるものでもないし、これはDTMの経験がモノをいう部分なのだろうと思って、少しは努力しようと思っているのだけれど。
「……素直に原作者さんから音源貰ってください!」
 初音さんは、私のそんなけなげな思いを、かんたんに打ち砕く一言を放ってくれやがった。
「初音さん、私はいいかげん耳コピも練習した方がいいと思っているんだけれどね」
 なにせ、自分の頭の中に浮かんだフレーズを、すぐに譜面におこすことができないのだ。音を確かめるためにいちおう鍵盤を叩いてみるが、最初の一音が違えば、曲の印象はまったく変わる。どれがいちばんイメージに近いか探すだけで、時計の針はびっくりするほどすすんでいるのだ。
 初音さんは、そんな私を睨みつけるようにして見ながら、頬を膨らませて言った。
「マスターは、わがままです!」
「ほう。そう言うからには、根拠がほしいところだねえ」
 息をのむ音がきこえた――否、初音さんが「息をのむ」ときというのは、文字通り、多くの息をのんで、その肺に送る行為をいう。ようするに、これは、彼女の息つぎ。
「なんでマスターが耳コピ苦手だからってお姉ちゃんとお兄ちゃんが離れ離れになんなきゃいけないんですかだいたいそのい理屈が既におかしいんですよお姉ちゃんとお兄ちゃんが一緒にいると不都合なことなんてなにもないじゃないですかマスターがやろうとしてるのはカバーなんでしょうお姉ちゃんとお兄ちゃんが久しぶりに一緒にうたう曲つくってるんでしょうそれなのになんでわざわざ離すかなあミクはそのマスターの感性がぜんぜんわけわかんないんですけど!」
 早口な初音さんの声は、きんきんと響いてきらいだったのだけれど、聴き慣れればここちよいもので、BPM200越えであろう速度で放たれたそのひとつながりの文章を、私はたぶん正確にききとった(でも、これを譜面に起こせと言われたらうまくできないのが、耳コピが苦手で歯痒い点だ)。
「……で、私がわがままだという根拠は?」
「だから、マスターの都合でふたりを引き離すのが可哀そうだって言ってるんです! お姉ちゃんが最近どんなに沈んでいることか……マスターは乙女心を分かってないでしょう!」
 ふむ(……初音さんは私の性別をなんだとおもっているのだろうか)。というか、私がわがままというなら、キミたちにうたって貰うということじたいが、私のわがままなので、往々にして私はわがままだという話で、つまり、私はわがままがデフォルトなはずだけれどねえ――という言葉は呑み込んで、初音さんが納得するような説明を考える。要するに、初音さんは、めーこさんとかいとくんが一緒に居ないのが不満らしい。それならば。
「……初音さんになら、教えてもいいかなあ」
「なにを!」
「めーこさんとかいとくんをわざわざ離している理由だよ」
 初音さんの目が輝く。双子に似た好奇の目。よしよし、乗ってきた。それでいい。
「めーこさんに内緒にしててくれるんだったら、教えてあげてもいいけど。どうかねえ」
 別に「釣って」いるわけではないのに、釣った気分になるのはなぜだろう。初音さんは私を責めに来たはずなのに、もうすでに私にほだされてしまっている。申し訳ないなあ、なんて、上から目線で思いながら、概要を話す私も、なんだかんだで初音さんに甘いのだろうか。

1<< To Be Continued... >>3 (C)KERO Hasunoha
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ちなみに副題は直訳すると「旧暦七夕」になります。たなばたがスターフェスティバルなんて素敵!

[ 2010/02/13 20:19 ] 小説系 | TB(0) | CM(0)

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