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たなばたネタ最後! 

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The Seventh Night of August ―― The star festival in old calendar.
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4.七月二十八日

 7月28日。めーこさんとかいとくんが、顔を合わせず声も交わさず3週間。
 久しぶりにるかさんのエディターを起動すると、るかさんは出てくるなり仏頂面だった。るかさんは来た時からずいぶん気分屋だと思っていたけれど、ここまで機嫌を損ねられたのは初めてじゃなかろうか。でも、最近るかさんに何か嫌なことをした覚えはない。そもそもエディターを起動していなかったからなのだけれど、いつぞやのかいとくんのように、呼ばなかったからといって機嫌を損ねるような子ではないから、なぜだろうと思って訊いてみたら、るかさんから意外なひとことが漏れた。
「マスター、わたくしのことを仲間外れにしましたわね」
 はて。なんのことだろうか。首をかしげると、るかさんはさらに頬を膨れさせ、鏡音と初音にはお話してくれたくせに、わたくしにはお話してくれませんでしたのね! と言った。
 ああ、そうか。そういえば例の話は、めーこさんとかいとくん以外、みんなに話した気でいたのだが、るかさんには直接話をしていなかったな、と思いだす。てっきりりんちゃんか初音さんあたりから全部聞いているものだと思っていたのに、あの子たちも変に律儀だなあと苦笑する。
「やあ、すまんね。りんちゃんや初音さんから聞いていないかい」
「みんなして、ちゃんとは教えてくれないのですわ。いいんですのよ、べつに。教えてくれなくたって、わたくしは」
 つん、と横を向いたるかさんは、よそのるかさんに負けず劣らずクールで格好いいのだが、こうやってたまに子どもっぽい振る舞いをする。それが彼女を可愛いとおもうゆえんなのだけれど、るかさんに「可愛い」というと、かならず「ばかにしないで下さいませ!」と言って顔を赤くする(それがまた可愛い)。尤も、性格的な意味で、一番可愛いのはめーこさんのような気もするけれど。
「ちゃんと教えるよ。えっと、どこまで聞いてる?」
「……なにか、うたの仕込みなのだ、というところは」
 うーん、微妙にぼやかしたあたり、さすがは約束を守るよい子たち、というところか。
「実はね、デュエットしてもらおうと思うんだけど」
「ねえさまと青いののデュエットなら、たくさん作ってらっしゃるじゃないですか」
 ぶうぶうとブーイング音が聞こえてきそうなほど、不服そうなるかさんだ。これはこれは、根が深いことだ。
「えーとね。カバー曲なんだけど」
 私がその曲名を口に出すと、るかさんは目を見開いた。
「あれを、ねえさまと青いのに?」
「うん。それでねえ、ちょっと雰囲気作りに」
 その曲は、もともとよそのるかさんと初音さんがうたったものだ。耽美的な歌詞に、繊細なピアノが主体の旋律。曲の構成的にも、歌詞的にも、深読みしようと思えばいくらでも深読みできる内容を、かいとくんとめーこさんでカバーしたらどうなるか、興味がわいた。
 しかし、それには、ウチのかいとくんとめーこさんは所帯染みすぎている、と、思ったのだ。お互い相手がいるのが当たり前、に、慣れてしまっている感じがして、とにかく、一度離れることで、なにかしら変化があるのではないかと思ったのだ。
「……ずいぶん強引な考え方ですわね」
「でも、そうでもしないと彼らは離れられないだろう?」
 実際、めーこさんとかいとくんをわざわざ離した理由なんて、この一点に尽きる。
 基本的にめーこさんにべったりのかいとくんと、それが当たり前になってしまっているめーこさん。他の家のMEIKOと一概に比較はできないが、ウチのめーこさんは、ひとりでいた期間はそれほど長くない。私がめーこさんを迎えてから、かいとくんを購入する決意を固めるまで、それほど長くはかからなかったせいだ。だから、これは、きっとウチのめーこさんとかいとくんにとっては、プロトタイプ時代以来久しぶりの、もしくは「めーこさん」「かいとくん」として初めての、長期間の「別離」。
 手の届くところにないからこそ、大切さが身にしみるものというのは、たくさんあるのだ。その感覚を、めーこさんとかいとくんに思い出させてやろうというわけだ。
「……それは、やりたいことがやれない、って焦燥と似ていると思ってね」
「禁酒は、それで?」
 そうなのだ。ほんとうなら、かいとくんは禁アイス、めーこさんは禁酒、だけのつもりだったのだ。冗談で言った「禁MEIKO」は、ただの冗談として流されることを期待したのだが、意外にもかいとくんが食いついてきたのが、ことの発端とも言える。そうだよ、かいとくんがそこに食いついてきたから、ちょっと意地悪したくなったんだよ。うん、私はわるくない。めーこさんに負担がかかっているのはかいとくんのせいだからね。めーこさんはあれでいてかいとくんがいないとヘコむのにね、そうさせてんのはかいとくんだよ。うん、断じて私ではないな。
 そう説明してやると、るかさんは不思議そうな顔をした。
「そこまでねえさまのことを深く理解してらっしゃって、心配もしてらっしゃるのに、どうして一律に『禁MEIKO』『禁KAITO』を言い渡さなかったのです?」
「かいとくんに訊いた後だったからだよ。かいとくんに訊いたことを、めーこさんに訊かないのは不公平だろう?」
 ……正直、めーこさんの答えが「禁酒」だとは思わなかったんだ。でも、これも私のせいではないな。
 そう言ってやると、るかさんは、呆れたように天を仰いだ。
「……マスター、さっきの言葉、訂正させていただきますわ。マスターはねえさまのことを深く理解してらっしゃるけれど、詰めが甘いのですね」
 そこについては、なんとも反論できないところである。


5.八月七日

 8月7日。めーこさんとかいとくんが、1ヶ月ぶりに再会する日がきた。
 久しぶりに2人を会わせる前に、最後の仕上げだ。
「るかさん、準備はできてる?」
「オーケーでしてよ。ねえさまのスリーサイズばっちり合うものを探してきましたわ!」
「あっ、ルカちゃんずるい! ミクにも教えてよ、お姉ちゃんのスリーサイズ!」
 るかさんに頼んでめーこさんに用意したのは、黒のシンプルなマーメイドラインのドレス。装飾は、肩にかけるビーズのアクセサリーと、普段はつけない大きなヘッドフォンのみ。アクセサリー類は初音さんにお願いしたのだが、初音さんは最愛の姉のスリーサイズがわからないからといって口をとがらせている(それを知ってどうする、と、思うところではあるが)。
「れんくん、そっちは大丈夫だね?」
「おう、言われたとおりのもの、探してきたぜ」
「ちょっとレン、あたしも手伝ったんだからね!」
 双子に頼んだのは、かいとくん用の衣装だ。かいとくんには、いつもの暑苦しいコートじゃなくて、黒基調のフォーマルスーツ。でも、タイはほとんど飾りにしてもらうつもりだし、胸元もそこそこボタンは閉めないようにいうつもりだ。マフラーは……なくてもいいかと思って、装飾品の中には入っていないので、こちらも大きめのヘッドフォンだけ用意した。
 PV撮影も込みのつもりでいるので、衣装もちゃんと凝っているのだ。
「――さて、めいっぱい緊張したおふたりは、どんな声でどんな風にうたってくれるんだろうねえ?」
「カイト兄がトチる、に、バナナ3本」
「んー、じゃあわたしは、お姉ちゃんが恥ずかしくなって逃げる、に、ネギ2本」
「ねえさまはそんなことはしませんわよ! ねえさまはお仕事を完璧にこなす、に、切り身500グラム」
「カイト兄が我慢できずにうたってる途中で『ごめんめーちゃんちょっとトイレ!』って言って脱走する、に、みかん6コ」
 みんな自重しようね、と言いたいところだったが、どれもこれもありそうで困る――もちろん、困るのは、おもしろすぎて困るのだ。
「マスターは?」
「――とてもおもしろいことになる、に、刈穂の大吟醸を一升」
「ちょっと、マスター、それずるい!」
「それじゃあマスターの一人勝ちじゃん!」
「というか、賭けになりませんわ!」
「あたりまえだろう、私は賭けなんてする気はないよ」
 どちらかといえば、私はディーラーだろうし、と言うと、双子からは「マスター抜きで賭けようぜ!」と声がかかっていた。……どうしてもなにか賭けたいのか。しかし、この場合、賭けごとは余興として最適だ(私は、だれが勝つか見ものだなと思って、静観しているほうがおもしろいと思うけれど)。

 そういうわけで、事態は、もしかしたら、めーこさんとかいとくんにとっては、七夕伝説の織姫と彦星よりも過酷なのではないだろうか。
 きっと、つんつんしている織姫は、無理にでも曲に集中しようとして、曲に集中すればするほどその歌詞の意味を深読みしてしまって思考が散漫になるだろうし、やるときゃやるけどヘタレな彦星は、それでも結局おとこのこなので、きっときもちはずっと彼女に向いたままだろうし。それでなくても、るかさん・初音さん・りんちゃん・れんくんの4人が、すでに私とぐるになって、織姫と彦星の逢瀬をニヤニヤしながら見る気満々で、待ち構えているのだから。
 お互いを気にして、集中をそがれてはいけない。そして、ギャラリーを過度に気にしてはいけない。そんな状況下でも、うたはきちんとうたわなければならない。

 なにが過酷って、なにに注意していいのかわからないこの状況が、なにより過酷なんじゃないだろうか。

 まあ、ここでどう反応するか見たくて、めーこさんとかいとくんを離してみたってのもあるんだけどね。いやあ、たのしみだなあ。たまにはこういうのもいいよねえ?
 ――やれやれ、趣味の悪い天帝もいたもんだ、なんて、自分で自分を嘲笑いながら、私は、自分でわかるほどにやけた笑いを浮かべた。

2<< Fin. (C)KERO Hasunoha
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これからめーちゃんと兄さんが歌うのはこれ⇒【ニコニコ動画】【MEIKO・KAITOでカバー】magnet
それから、れんきゅんが言ってた「勇気とか愛とかなんかその辺のもん」については
これらを参照のこと。視聴するときは飲み物は置いて見た方が無難です。
【ニコニコ動画】【初音ミク オリジナルミュージカル】 SADAME~運命~
【ニコニコ動画】【VOCALOIDS オリジナルミュージカル】 闘志~TO SHE~

ではでは、お読み頂きありがとうございました!

[ 2010/02/13 20:26 ] 小説系 | TB(0) | CM(0)

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