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生首にキスするサロメのきもち! 

サロメ。ヘロデの義理の娘。ヨカナーンに恋する狂った乙女。

彼女の気持ちがわかる女はそうそういないと思う。いや、わからないほうがいいと思う。
なんとなく、わかってしまってから気がついた。サロメのような「思い」は、その身を滅ぼす。

******
066:666――文字書きさんに100のお題より
******

 ある日、あるとき、アタシの前に悪魔があらわれた。
「なんだ、シケた顔した女だな。何が望みだ?」
 望み? アナタ、アタシの望みを叶えると言った?
「てめえ、オレを呼び出しといてそれかい?」
 呆れたふうに悪魔は言う。
「言え。何が望みだ?」
 ――アタシの望みは。

 虚ろな空は、いつもアタシを憂鬱にさせる。否、アタシが憂鬱だから空が虚ろに見える。なんだってそう、互換性をもっている。アタシの感覚はいつも世界の見え方を変える。だから、アタシの感覚は、アタシの世界と互換している。否、アタシの世界はアタシの感覚でしか捉えられない。
 アタシの感じる世界は、いつでもアタシのモノであるべきだ。
 アタシ。絶対唯一のアタシ。
 アタシはアタシが大好き。アタシがいなけりゃこの世界は回らない。だってこれはアタシの世界。
 だから、アタシは、アタシの世界を乱すモノと、アタシを傷つけるモノが大嫌い。
「何が望みだ」
 そう高飛車に訊く悪魔を傍らに、相変わらずアタシは虚ろな景色の中を生きている。
「だから、保留」
「いい加減にしろよ、もう保留宣言して何日経つと思っていやがる」
「時間制限があるなんて話はきいていないよ?」
 ウザイ女。悪魔は毒づいて、それでもまだアタシの傍らにいる。
「賢い女、と言ってちょうだい」
「それが望みか?」
「そんなわけないでしょう」
 バカね。アタシも悪魔に毒づいて、それ以上悪魔に近づくことはしない。
 悪魔は言った。アタシに望みを訊く以外にも、悪魔はたくさんの情報をアタシに与えた。悪魔は、望みを叶えるイキモノだ。カミサマとかテンシサマとかも、望みを叶えるイキモノだけど、そういうイキモノは自分の気に入った相手の望みしか叶えない、偏った思考をもったイキモノなのだそうだ。悪魔は、望みを叶えるときに、望みを叶える相手を気に入るとか、気に入らないとか、そんなことは裁量しない。その望みに見合うだけの、相応のモノを代償に悪魔は相手の望みを叶える。つまり、払える代償分なら、なんだってやるのだと。
「ねえ、たとえばアタシが払える最少の代償を払うと、アタシは何を得られる?」
「望んだだけのものを」
「ねえ、たとえばアタシが払える最大の代償を払うと、アタシは何を得られる?」
「望んだだけのものを」
「ねえ、アタシが望むモノが、アタシの払える最大の代償では払いきれなかったら?」
「そんな望みは叶えない」
 悪魔とは、公正なイキモノだと、悪魔は言った。
 アタシも、悪魔は公正なイキモノだと思う。

 アタシは、アタシが生きている世界の中に、人影をみつける。ぷつんと切れた音がする。

「ねえ」
「もうその問いは飽きた」
「そうだろうと思う」
「何が望みだ」

「――あのひとのくびをちょうだい」

 アタシの視界に入る人影。アタシの世界に要らないイキモノの影。あんな穢れたイキモノ、アタシの世界に必要ない。
 あのイキモノは、過去にアタシを傷つけた。アタシのダイジなものを盗っていった。アタシの世界に、大きな欠けをつくった。そんなイキモノ、アタシの世界になんかいらない。
「――あのひとのくびをちょうだい」
「そんなモノでいいのか?」
「あのくびがほしい」
 アタシは反復する。あのひとのくびがほしい。
 妙な女。訝しがる悪魔。少女は妙なものだよ。笑うアタシ。アタシが笑ったのは久しぶりのことかもしれなかった。
「何を払う?」
「あのくびに相当するなにか」
 アタシは、あのくびが手に入るなら、何でも払おう。あのくびにはその価値がある。

 ひゅん、と、アタシの世界になかった風が吹いた。

 それまで人影だったものが、頚動脈を切られた肉体が、噴水のごとく血を虚空に吐き出す。べちゃべちゃと肉が舞い、骨が散り、不自然に立っていた胴体がアスファルトに倒れ転がる。
 ――くびは?
「てめえの望みだ」
 悪魔が、おびただしい量の血を吹き出しているくびを、銀盆に載せて傍らにいた。銀盆から血が滴る。見る間に銀盆は赤鉄色の硬質な首台に変わった。
 アタシは、満足気にそのくびを銀盆ごと受け取る。
「おかえりなさい」
 オカエリナサイ。アタシの世界にオカエリナサイ。やっと帰ってきた。アタシのアナタ。

 ぎゃあああとも、きゃあああとも聴こえるイキモノの叫び声。アタシの忌み嫌っていたイキモノの叫び声。アタシの世界を壊したイキモノ。
 アタシのダイジなあのひとを、ずっと今まで傍らに置いていたイキモノ。
 でも、あのイキモノが何を喚いても、アタシは別にどうでもいい。

 だって、彼は「帰ってきた」。

「おかえりなさい」
 ちゅ、とその唇に、血の味のするその唇に接吻を。
「だいすきよ」
 あのイキモノは、くびだけのアナタを見て、さも恐ろしいモノのように叫んだよ。
 くびだけになってもアナタはアナタなのにね。
 アタシは、アナタがどうなってもアナタを愛してあげるから。
 ほら。このキスがその証拠。
 もういちど、血を舐めるような接吻を。

「望みは叶えた」
「ありがとう」
 上の空で、アタシは言う。アタシの世界は、いま、目の前のくびがあることで満ち足りている。
「代償を頂く」
「どうぞ」
「オレが何を頂くのか訊かないのか」
「いらない」
 ああ、こたえになっていない。わかっている。でも、いいの。アタシはシアワセ。このくびのほかはどうだっていい。代償がなにかは多分知っている。アタシには、アナタがいればイイ。
「そうか」
 あれ、いま誰か何か言った? でも、ああ、どうでもいいや。アナタ以外はなにもいらない。
「貰って行くぞ。あばよ、変な女」

 アナタ以外はなにもいらない。アナタのくびの代わりが、たとえばアタシのイノチだとしても。

(C)KERO Hasunoha
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あとがき。

ドロドロと書いてみたもの。結局まとまらなくてあうあー……みたいな。やっぱり自分の気持ちを
ストレートに物語で書くのは向かないみたいです。うん、やっぱり私の物語は架空だからいい。
今回は、当然の如く戯曲のサロメ(オスカー・ワイルド作)に似せて書いてます。

戯曲「サロメ」の主人公サロメはヘロデ王の義理の娘。ヨカナーンという男に恋する狂った乙女。
城の井戸に投獄されているヨカナーンに惹かれ、ヨカナーンに会いたいがために他人を死なせて、
果ては邪な思いでサロメに接する義父ヘロデに己の肌をさらしてまでも、ヨカナーンを求めた
女の子です。戯曲のサロメはヨカナーンを思うあまり、その首を欲して踊り、いざヨカナーンの首が
銀の皿に載せられてくると、大喜びして口づけするほどに、情熱的で狂った思考をもった女の子。
ま、そんなことしたから義父のヘロデ王に気持ちわるがられて殺されてしまうのですが。

で、なんでサロメの話に悪魔を絡めてタイトルを666にしたかというと。
666とは俗に悪魔(的なもの)を指す数字ですが、そのルーツは新約聖書の「ヨハネ黙示録」。
戯曲サロメは、新約聖書の一節、洗礼者ヨハネの死の顛末について書かれたものをモチーフに
書かれたものです。戯曲のヨカナーンとは洗礼者ヨハネのことを指しています。物語を書く前から、
なんとなくサロメと悪魔を絡めることはきまっていたのですが、ここまできたら運命でしょうと(笑

いまでもサロメのきもちはわかります。今なら生首にでもちゅーできる気がする(ぇ
でも、サロメのきもちなんかわからないほうがシアワセに生きていけると思いますよ。

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[ 2008/06/25 01:14 ] 小説系 | TB(0) | CM(2)

お前に接吻したよ

わたしの好きな画家ビアズリー氏が『サロメ』の挿絵で有名なんですが…お話は初めて知ったよ。
成る程、エログロだったのね。。。これ以上ない人選だったのね

もしよかったら、ビアズリーの絵もみてごらん
エログロとはあれをいうんだよ!
[ 2008/06/26 16:02 ] [ 編集 ]

れす!

コメントありがとうございますー!

Wikipediaでビアズリーしらべてきたよ! 絵も掲載されてたから拡大してみてきた。
Wikiだからか割とえろぐろじゃない絵だったけど(笑)。なんか蜜ちゃんの画風と似てると思った。

以前授業でオペラのサロメを見たんだけど、蜜ちゃんもオペラ見るといいよ!
[ 2008/06/27 00:37 ] [ 編集 ]

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